5th CompanyTrip
ノット、5回目の社員旅行。
北京に始まり、バンコク→東北→LA、そして今回のミラノ。
まさか、社員旅行でミラノまで来れるとは…
今まで以上にデザインにどっぷり浸かる旅になる事だろう。
11年ぶりのミラノサローネ。前回行った時は、物量に圧倒され、とにかく体感する事で精一杯だった印象。11年前なので、傾向の比較などは出来ないが、今回は、また違った見方が出来ると思うので、感じた事をまとめて行きたい。
Salone del Mobile Milano
About
正式名は「Salone del Mobile.Milano サローネ・デル・モービレ・ミラノ」。通称ミラノサローネと呼ばれ、今回で55回目の開催となる。会場は、イタリア人建築家マッシミリアーノ&ドリアナ・フクサスが2005年にデザインしたロー・フィエラ・ミラノ。東京ビッグサイトの約3倍の広さで、世界第4位の広さらしい(ちなみに東京ビッグサイトは72位)。
同時開催される見本市として、照明「Euroluce(エウロルーチェ)」とキッチン「EuroCucina(エウロクチーナ)」があり、それぞれ隔年で行われる。今年はエウロクチーナの年。
ヨーロッパでの経済不安やテロなど、社会的には不安定な環境にありながら、来場者の数には大きな影響がなかった様で、来場者・出店者数共に増加したとの事だった。
背景はそんな所にして、多くのメーカーの展示を見た中で印象に残ったブースと全体の感想を。現在の職業上、家具やプロダクトからというよりも、どんな空間でどう見せるかというブースデザインの観点からまとめてみた。
Color
まず、感じたのが「Color」について。
原色を使ったポップなデザインは少なく、ペールトーンを使った優しく甘い色使いが多く感じた。
ブースの雰囲気として、とてもいいなと感じた「GINGER&JAGGER」。その他多くのブースに見られた傾向だと思う。
2016年のトレンドカラー「ローズクォーツ」と「セレニティ」
家具にも同じ様な傾向が見られた。
Material
つぎに、「Material」。
こちらもブースから受ける印象になるが、安価な構造材を使ったブースが多かった。
展示会のデザインの特徴と言えばそうかもしれないが、それをあえてデザインに上手く取り込んでいるブースが多かった。安っぽく見せず、エコロジカルな印象。
コンテナ風で工業的な要素も感じるデザイン。
ここでもペールトーンの優しい色使い。
See-through
ブースのファサードにあたる「See-through」。
展示会のブースデザインの特徴でもあるシースルー感があるファサードの作り方が色々あって、興味深かった。
「nicoline」のターポリンの様な生地を使った編み目がベスト。
蜂の巣状だったり…
コンクリートブロック風。かなりがっちりとした印象に。
エキスパンドメタルは開口率がキモ。
一枚一枚微妙にねじれを変えているので、動きを感じる。
Green
次に、「Green」。
多くのブースで、積極的に使われていた印象。近年の流行というよりは、もう定番化したと言っていいかもしれない。
ブース内がグリーンだらけで、家具よりそっちの印象が強い位。
搬入が大変そうな大木も。
なぜかレモンの木が各所で見られた。
天井にグリーン。これは正直微妙。。。
展示とはあまり連動させず、通路から見える景色として。
Story
そして、「Story」。
制作の背景を感じさせるクラフト感のある展示や単に家具の新作を見せるのではなく、空気感やシチュエーションなど「家具」から派生する様々なストーリーを感じられる展示が目立った。
職人の道具箱を見た様な感じだったり。
アンティークの作業台をDP台に使用するブースも結構多かった。
プラスチック家具メーカで知られる「Kartell」は、物というよりは人(デザイナー)にスポットを当て、本人に商品について解説させる手法で展示。スポットの当て方は違えど、背景が見える展示としては、同じ様な傾向と言えるのではないかと感じた。
Detail
個人的に気になって、見た部分として、「Detail」。
収納家具には多くの細かいディテールが潜んでいて、驚かされた。白い枠にテーパーをとり、すごく薄い印象に。
このカッパーの金物をR加工はとてもきれいだった。
特に出隅の処理は、妥協なく技術的に優れた物が多かった。
古材を使った家具でさえ、留にしておさめていた…(これは疑問だが)
若干、使用に不安感のあるディテール…
今年は、エウロクチーナという事で、キッチン用品を多く見れたが、通常の収納家具にも増して、機能とディテールにこだわりを感じた。
Installation
その他、気になった展示として、「Installation」。
公共空間の植栽を始め、屋内の緑化に力を入れている企業「VERDE PROFILO」。MOSSwallという新素材で覆われたブースはインパクトがあった。
もう一つは、会社名は記録し忘れてしまったが、ゴム風船を使ったインスタレーション。商品との連動感はない様に感じたが、不思議な空気感があった。
Exterior
番外編として、「Exterior」。
外部で使う家具の提案が多かった様に感じた。
外部で使う事で機能的な制約を受けるため、デザイン的には遅れていた印象だったが、色々なバリエーションのデザインが見れた印象。
ブースのデザインや見せ方など、まだまだ良くないが、グリーンを使った展示などを見ても、内と外の関係性を重視して行く傾向は強くなっているのではないかと感じた。
Fuorisalone
About
ロー・フィエラ・ミラノでの展示と同時期に、ミラノ市街地で行われる各種イベントの総称が「フォーリ・サローネ」。高額の出展費用とさまざまな縛りがあるロー・フィエラ・ミラノでの出展を嫌った地元メーカーが、同会場の外で展示を行ったのが始まりと言われている。
家具の展示というよりは、会社のブランドイメージ向上や方向性の提示などを目的に行われ、会場の選定なども含め、自由度高い面白い展示が見れる印象がある。
各地区で行われた展示の感想とそこから感じた事をまとめて行きたいと思う。
BreraDesignDistrict
まず、フォーリサローネの中心とも言える「ブレア地区」。
ここで一番印象に残っているのは「nendo-50 manga chairs in Milan」。
軽快さとコンセプトの明快さでとてもネンドらしく、今っぽい展示だと思った。
時代を感じる重厚な建物の中庭という会場と鏡面仕上の軽快な椅子というバランスが非常に良かった。
日本の文化としての漫画、日本のクラフトマンシップとしての鏡面仕上、「JAPAN」を意識した表現構成で、個人的には好きな展示だった。
「HAY」のカラーや高低で見せる様々なシーンが楽しい展示。
「marimekko」の空気感は随所で感じられた。
「10・corso・como」での異色ブランド-グフラムの奇抜な展示も面白かった。
「Panasonic」の展示も日本を強く感じる物だった。
TortonaDesignWeek
平日とは思えない様な町を挙げてのお祭り状態の「トルトーナ地区」
多くの面白い展示があった中、一番良かったのは建築家・田根剛氏(DGT.)による「CITIZEN」。
【時】というブランドにとって明確でストレートなテーマで構成。幻想的な展示で圧倒されながらも、テーマをしっかり感じられ、様々な趣向で楽しめる展示だった。2014年の出展は知らなかったのだが、一つのテーマを突き詰め、深めて行くという手法もありかなと思えた。
もう一つは、こちらも日本企業となるが「LEXUS」。
テーマは、「Anticipation=予見」。これからブランドが進む方向性と日本企業としてのプライドの様な物が、しっかりとしたストーリーを持って展示されていた。障子からインスピレーションを受けたという繊細な会場の中で、1700本の糸と重厚な装置というアンバランスな展示が印象的だった。食とのコラボレーションも他との違いや日本らしい細やかさを感じられたし、五感を刺激する展示が特徴的だった。
展示の内容より空間が格好良かった深沢直人の「UNVEIL」
ブランドの世界観が目一杯詰まった「moooi」
外部との関係性が気持ちいい「IKEA」
展示は大した事なかったが明確なコンセプトが感じられた「TOYOTA」など見所が多い地区だった。
その他
その他の地区で行われていた展示から幾つかピックアップしてみた。
「TomDixon」
【The Restaurant by Caesarstone and Tom Dixon】と題された展示。
「EARTH(土)」「FIRE(火)」「WATER(水)」「AIR(空気)」をテーマに十字型の4ゾーンに分かれ、それぞれのテーマに合わせて〈トム・ディクソン〉の新作を盛り込んだ空間で食事が提供されるという仕掛けがとても面白かった。
展示会場、4つのストーリー、それに合わせたプロダクト、食も含めたバリエーション豊かな展示で、圧倒された。
「NIKE」
【The Nature of Motion】と題された展示。
サローネにスポーツブランドが出展という事で、まず驚いたが、内容を見てさらに驚いた。
会場の関係でゆっくり見れなかったのが残念だが、会場も内容もボリュームも今回のベストではないかと感じた。最新アイテムをテーマにした家具や楽器、映像表現、過去のアーカイブ、コンセプトモデルの展示など〈フライニット〉を軸に過去や未来、展開の可能性まで、ボリュームがありながらも密度の濃い展示だった。
空間的にも、郊外の倉庫を舞台に、積み重ねた白いシューズケースでのゾーニングや倉庫に合った古い機械を使った展示やLEDによるスポーツ感と近未来感の表現など見所満載。
NIKEの新作フライニットをコンセプトにした編み目の家具など、家具のトレンド感も感じられながらも、新作のアイテムと連動した技術も表現されていて、良かった。
TAKEO PAPER SHOW「SUBTLE」
ミラノトリエンナーレ美術館で行われた㈱竹尾による展示。原研哉によるディレクション。
2年前の東京からスタートし、大阪・台北そしてミラノと巡回した展示との事。全然知らなかったが、日本らしいシンプルで繊細な展示だった。
日本だからこうです!!って事よりは、結果的に日本を意識出来る様なデザインだと感じ、いいなと感じた。
「COSxSouFujimoto」
展示としては、幻想的な雰囲気とシンプルな構成や展示会場との相性など、いい展示だとは思ったが、COSのブランド表現としてはストーリー性が乏しく、説得力に欠けた様に感じた。
MilanoDesignWeek 〜まとめ〜
ミラノサローネ、フォーリサローネと見て、11年ぶりなので、流れの変化をダイレクトに比較する事は出来ないが、感じたデザインの流れをまとめてみたいと思う。
1:時代感
今っぽさの表現としては、作り込んだ重厚なデザイン表現ではなく、軽快なデザインが好まれている様に思える。ファッションで言う所のファストファッションの様にインテリアの世界でもトレンド感をいち早く取り入れ、アウトプットして行く感覚が必要なのではないか。軽快さとスピード感がポイントで、ネンドはこの辺りが上手い設計事務所だと思う。
2:普遍的な要素
物を消費する時代は終わり、かっこいいだけのものでは受け入れられず、企業のぶれない理念であったり、物が生まれた場所であったり、ストーリーがしっかりあるものが求められている。地場デザインというのも一つのストーリーになりうる大きな要素である。日本で生まれたデザインは、どのような形であろうとも、日本で生まれた意味を持つべきだし、説明出来ないとダメだと思う。
まとめ
上記の二つは、相反する部分がある様に思うが、同時に実現させる事が必要。例えば、伝統的な技術をそのまま使うのではなく、現在の形にどう生かすか。もしくは、長く使い続ける為にきっちり時間を掛けて作り込んだデザイン(過去にいい物が沢山ある)でなく、思わず手元に置いてみたくなる様なデザイン。その上で、こだわったマテリアルとそこで生まれるストーリーがある様な、そんなイメージ。
この辺りをつなぐのがデザイナーの役割ではないかと感じる。ただ、伝統や工芸など歴史ある物を否定するのではなく、むしろとても肯定的に捉えリスペクトした上での住み分けという事の様に思える。今回の展示でも奇抜な目を引くデザインは少なく、実際使ってみたいと思わせる様なロングライフデザインが多く見られた様に感じた。
最後に、、、11年振りのミラノサローネであったが、印象としてはやはり世界最大のインテリアのお祭りだと感じたので、空気に触れて、世界を体感出来る事が何より良かった。グッと自分を俯瞰出来る今回の様な体験はとても貴重な体験だったと思う。定期的に来る事で見える事も多いと思うので、あまり時間を空けず、今後も参加出来る様にして行きたい。