2019年 4月開催のミラノデザインウィーク、ミラノサローネを見てきた。世界的な好景気も終わりを告げるといわれ、EUからイギリス脱退か?など……なんとなく見えないものに不安を感じる現状でのミラノサローネを私なり視点で、確認していく。
2019年 世界で1番のデザインのお祭りミラノデザインウィーク、ミラノサローネはどう変化したか?
2019年58回目のミラノサローネはルーチェの年。毎年隔年で家具とキッチン、家具と照明、というカゴリーで行われているが、今年はルーチェ(照明)の年です。
そして、新しい試みとしてホール(22・24)に「S.Project」と名付けられた特設パビリオンが登場。ジャンルを問わず上質なデザインをしている有名ブランドが家具・水まわり・照明に加えて音楽・ウェルネスなど、ジャンルに捉われない多目的な展示で、今のライフスタイルがよりわかりやす展示になっていた。
2019 ミラノ・サローネ全体の印象は?
デザインのクオリティーアップを感じた。
家具もNC工作機械のIT化の発達、情報の多様化など、どの企業も一定のレベルのものが作れるようになった現在、ハイブランドの家具メーカーと安価な家具を作っていた家具メーカーも技術的な部分はほぼ変わらないレベルに急速に発展した。
デザインも同じように、急速にレベルアップが進み、より何かがなれば誰も見てくれないような状況な現在、本当の意味での個性を出さないといけない時代に入ってきたからである。
そして、展示方法もブランドの個性を伝えようと考えられたものが多かった。そう、ただ良い家具を作れば良い時代は完全に終了したのだ。
照明器具の変化が素晴らしかった
2017年のユーロルーチェと大きく変化していて驚いた。新しいメーカーも出てきたり、新しい解釈の照明機具も色々と有り、じっくりと見てしまった。
LEDの進化が凄まじく、発光させるということの技術は、大きな工作機械、ガラスの加工技術などが照明メーカーには不要になった現在、家具に比べて簡単に照明器具が作り出せるようになった。これからの電動自動車がそうであるように……
有機Elや透過型EL、光のコントロール、色々な技術革新が面白い。
展示の方法にも時代の変化がある
ブラック、ホワイト、オーガニックなダルカラーが昨年より引きずって人気だが、トラディショナルなロイヤルカラー、ネオンポップな彩度の高いカラーなど、90年代的な色合いとかが、新鮮に感じた。
そして、コーラルピンクは今年は大人気で、色々なメーカーが会場やカタログなどに使用していた。
卓越した職人の技術で作られた物なのか?最新のイノベーション的技術で出来たものなのか?
今年もよりクラフト感を大切にしているメーカーが増えた。
これは2016年のサローネからより私も意識して感じ、そして注目している事である。素材感にも色々な変化が有った。
ポイントに皮を使うというのも今年のトレンドだったのかもしれない。引手や色々なところにポイントで使われるのをよく目にした。手作り感の強調。
軽さを出す素材。細いフレーム、軽快な布素材、薄い板など、軽さを感じさせるための素材使いも今年のポイント。当然そこには新しいイノベーションや技術が見え隠れしていた。
そして、家具をただ展示する時代は終了し、そのブランドのストーリーや、家具の裏側に潜む技術や考え方を前面に出す展示方法が目立った。
ミラノサローネで今年よかったブランド一覧
- Molteni&C
- カルテル
- ドリアデ
- SANCAL
- POLTRONA FRAU
- Arper
- Davdpompa
- Et ai.
- Vibia
- AGAPE
- Astro
- Mobboli
- artek
- Davidpompa
2019年 ミラノ デザイン ウィークとは?
本当に、市内で行われてる展示(ミラノ デザイン ウィーク)は年々新しい企業も参加して、盛り上がってきている。
初めてミラノサローネに行く人は、主要な展示を全てを見るとなると最低4泊5日は必要なぐらい色々と展示も増えている。それに伴って参加者も何年増え続けて、土日は行列の展示も珍しくなくなったのが、近年の状況である。
2019年 ミラノ デザイン ウィークのよかった展示は?
個人的な見解で順位付けさせてもらいます。
1位 レクサス 「LEADING WITH LIGHT」
テクノロジーは人のためにデザインしてこそその価値が生まれるというLEXUSの思想“Human-Centered”(人間中心)デザインを光のメディアアートで表現し、テクノロジーがよりよい未来へと来場者を誘うインスタレーションというコンセプト。
今まで色々とレクサスの展示を見てきたが、全く車体本体を展示しないがレクサスというカーブランドのクオリティーをしっかりと感じさせる素晴らしい展示だった。
ライゾマティクスにより演出だが、コンセプトを凄く上手に表現していた。機械だけが光と一緒に自動で動きまくるという展示だったら……多分ここまで感動的なプレゼンテーションにはならないはず。
人間が機械と一体感を出すというところにこだわったところが凄い。人間と一緒だと全然違う物に見えることに驚いた。
2位 KVADRAT/RAF SIMONS「NO MAN’S LAND」
Jean Prouveの3軒のプレファブ住宅の中に、Pierre Jeanneretによる大量のチャンディーガルのヴィンテージ家具、それぞれに新作ファブリックが張ってある。インスタレーションすべてラフ自身が手がけていて、会場のセレクトからディテールまで、彼の志向がすみずみまで発揮された空間。
会場の場所の雰囲気と展示がよかった。スタッフの服も絶妙に良い!赤とか青とか黄色とか
自分が思っているラフシモンズのイメージと違ったのも面白かった。クラッシック&アナーキーな感じじゃなくピースフルな感じ、会場の空気感がよかった。
3位 Google「A SPACE FOR BEING」
最初は全然知らなかったが3日目あたりから凄いらしいという噂を聞いて最終日のオープン前に行ったのに大行列だった。
腕にセンサーを取り付けて、3つの部屋を5分ずつ周り(その間は携帯もカメラの撮影も不可)部屋ではとにかくリラックスしてソファー座ったり、部屋にある本を読んだりして、最後に自分がどの部屋が一番好きでリラックス出来たかを、センサーで判断して最後に結果を教えてくれる仕組み出る
コンセプトは簡単だが、プロダクト、UI(ユーザーインターフェース)、ヒューマンインターフェースの完成度の高さに驚きました。
そして最後に丁寧な一人一人への解説とUX(ユーザーエクスペリエンス)を極端に意識しての表現がなんだかGoogleらしいな~と思わせた展示でした。
4位 Note design studio「Formations」
フランスのtarkettという床材メーカーが新しい床材の展示
私自身最近気になってる設計事務所スウェーデンの「Note design studio」の展示
シンプルな形態のみでここまで今な感じを出せるのは流石。色彩感覚、形態ボリューム、密度、展示方法どれをとっても、シンプルなんだけど考えられた演出だった。
もし、自分が床材メーカーと展示するならこんなアイデアは出せるのだろうか?と考えてしまった展示。
5位 Lissoni Associati 建築家ピエロ・リッソーニのオフィス見学
建築家ピエロ・リッソーニのオフィス見学。本来は予約制だったらしいが……どうしても見たくて、直接突撃しました。笑
見せてもらったオフィスプロジェクトを1つ1つ丁寧に説明してくれて、素晴らしい対応をしてもらって感動した。建築セクションをメインに、インテリア、グラフィック、プロダクト、と70名の人数がいる事務所。
働いてる人の笑顔とコミニケーション能力の高さにも驚いた。素晴らしかった。
6位 ユニオン(UNION)「One Design – One Handle」
大阪のレバーハンドルメーカーのユニオンが建築家 田根剛と組んでの展示。
実際に砂型に錫を流し込み制作する「砂型鋳造」のプロセスを現場で行うインスタレーション。錫を使うというのがポイントで、錫の融点が232度で低いのを利用して行っていた。シルバーに焦点を絞って細かいところまでデザインを整えていたのもよかった。
7位 スターバックス「リザーブ・ロースタリー」とアップルストアー「Apple Piazza Liberty」
2018年にオープンした2店舗。今回行ったら絶対に見なければと思っていました。
現代の2大アメリカの象徴的なスーパーショップ!トレンドを汲んだ、クラシカルモダンなお店とスーパーミニマルなショップ、全く違うコンセプトなのも面白い。とにかく徹底的にやってるところが素晴らしい。
でもなぜ、両メーカーともヨーロッパでの旗艦店をこのミラノに作ったのか?
8位 ポルトローナ・フラウ Connecting Experiences
本社、旗艦店ショールームが凄くよかった。
建築自体を生かした展示。内装のシンプルだけど密度の濃いデザイン。建築家の模型と3DCGの展示も面白かった。クラッシックすぎてつまらなかったブランドから完全変わった。
9位 ルイ・ヴィトン
昨年までのコレクションをメインに新しいものを少し足した展示内容。広いスペースを利用して坂茂の特別展は見所満点だった。
何となく80年代を匂わせる雰囲気があったり、カルチャークラブの音楽がかかったりと、飽きない会場旺盛で凄いたくさんの人が行列していた。
10位 テノハとダイキンとネンド
運営形式はわからないが、インテリア、雑貨ショップ、日本食レストラン、コワーキングスペース、の複合施設「テノハ」
そのイベントスペースを利用しての展示。NENDの展示スポンサーはDAIKIN。極端にシンプルなわかりやすい展示だが、よくできていた展示だった。よくも悪くもネンドらしい展示だった。
「〜らしさ」の重要性を改めて感じた。
その他の展示やショップで気になったものをピックアップ
ミラノ市内はデザインのお祭り一色。とにかく色々見るべきという事で、2017年のサローネ以来にオープンしたお店も色々チェックしに行ってきました。
ZARAの最新ショップ
新しいデザインの旗艦店。色々な仕掛けがあり楽しいデザイン。落ち着いた上質感があり、これからの方向性を感じさせられました。
トムディクソンの最新ショップ
毎年、色々な仕掛けで大規模な展示を行ってきたトムディクソンもついにショップ&レストランをオープンさせました。それほどスペースはありませんが良い場所にあります。
カッシーナの最新ショップ
カッシーナもまた新しく移転して本社?での展示。
ピエール・ジャンヌレの復刻にもびっくり! 80年代的な仕掛けがあり、楽しめる展示でした。
BDDW
NY発のハイエンドなエディション型ハイクラフト家具ブランド。ここも大好きです。
特にこのショップもあるサンタ・マルタ通りは、色々と面白いショップも出来始めてぶらぶらするには良い場所になってきました。
モンクレール(MONCLER)の最新ショップ
世界最大の店舗面積となる旗艦店 内装デザインはフランスの建築スタジオのジル & ボワシエ(Gilles & Boissier)が行う。これも楽しみにしていたショップ。彼らは普段はホテルのデザインが多く、私も興味がある設計事務所です。特に階段のアプローチが素晴らしかった。あとシンメトリーなファサードもよかった。
デウスサイクルワークス (Deus)
ミラノのデウスの自転車に特化したショップとカフェとレストランの複合店。
カフェとレストランがメイン。そこに物販がついてる感じのショップ。イケてる。
ヴァレクストラ(VALEXTRA)の最新ショップ
英国人建築家のジョン・ポーソン(John Pawson)が設計を行う。よくも悪くもジョンポーソンなお店。ようくないわけはないけど……新しさもあまり感じられない。
B&B
ガエタノ・ペッシェ50週年
&Tradition
2010年に創業したデンマークの家具メーカー。私が現在大好きな家具メーカー。
LG
LGとFoster + Partnersのインスタレーション「Redefining Space」
とにかく言いたい事がわかりやすい!それに絞って展示するのは良い。LGは2017年は吉岡徳仁とインスタレーションで最高賞を取ったんですが、今回は規模は小さいがわかりやすい良い展示だった。
Amor
何気に面白いな〜と入ったファーストフードっぽいお店。ピザを仕上げに蒸して調理するお店。
考え方、ショップが面白くてしばらく見ていた。気になって戻って調べてみると、インテリアデザインはスタルクだった。クラフトとイノベーションという事をしっかり意識しているファーストフード店。時間が無くて食べれなっかったけど……笑
テクノジム
カリモク
MAARTEN BAAS
Devide groppi
EX.t
デヴィッドチッパーフィールド
残念な展示たちは!
1番はソニー。色々頑張っているんだが何か消化不良で失敗。もっと何かに絞って展示をすればもっとよかったんじゃないだろうか?
2番はレクサス以外の自動車メーカー。ことごとくダメでした。
3 番はLGを除く韓国メーカー。そして、INAXなどの日本企業も色々見せたいのはわかるけど、何なの?で終了。
4 番はエルメスもお金かかってるし会場も広いけど……何やりたいのか?わからなかった。
ミラノサローネ ミラノデザインウィーク 2019 まとめ
世界中の人たちが、デザインの重要性に気付き、自分のライフスタイルにこだわりを持って生きるような時代に入り、ますますモノに対しての見方の質が高まっている。
安価な家具から、エディションと言われる1点もののアートピースな家具まで、色々なものが簡単に購入できる時代だからこそ、このミラノデザインウィークには、様々なブランドがブランド価値向上のため集まってくる。
ものは誰でも作れる時代、どうすれば自分たちを選んでもらえるのか?
そう……
良いものとはなんなんだ? 高価だから良いのか?貴重だからよいのか?新しいから良いのか?
年々、クラフト感を存分に出した物作りが増えている、感と言っているのは、職人さんの技術を極限まで活かした手作りの世界なのか?最新のハイテク機器を使ったイノベーションな技術なのか?
その極限の反対に位置しているように感じるが、実際に出来たものを見ると、そのモノは一体どちらで作ったか全く解らないというのが、今のものづくりの最先端で有り、面白さでもある。
価値を作りだす。それがものづくりである。
それだけは絶対だ!